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MSX転生工房

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ユング心理学における元型、共時性、布置、ヌミノースの視点で観たい映画やTVドラマ

ユング心理学におけるアーキタイプ(元型)、シンクロニシティ(共時性)、コンステレーション(布置)、ヌミノース(宗教体験)に関する映画やTVドラマを取り上げています。

わたしは専門家ではありません。独学です。

元型は、共時性、布置、ヌミノース、中年の危機、個性化、超越機能、全て内包しているので、元型を理解することがユング心理学への近道ではないでしょうか。



【目次】


 1.映画『サイン』2002年
 2.映画『プロフェシー』2002年 更新
 3.映画『スラムドッグ$ミリオネア』2008年 次回予定



先ず初めに「元型とは何か?」

ユングが一般の読者向けに書いた「人間と象徴」の中から、元型についての記述をまとめてみました。

「元型とは何か?」まとめ①

●元型はイメージであり、また情動である。その両者が同時に存在するときにおいてのみ元型ということができる。たんなるイメージだけのときは、それはたんなる絵文字で、何らの結果ももたらさない。しかし、情動を担うことによってイメージは、そのヌミノス※(あるいは、心的エネルギー)を獲得する。したがってそれは力動的となり、何らかの結果がそれから生じてくるにちがいない。

※ヌミノスはルドルフ・オットーによって提唱された概念。宗教感情の中心的なものとして、畏敬、魅惑、力、の感情を伴う。ユングは、宗教体験を示すものとして、この概念を重視している。(オットー著、山谷省吾訳「聖なるもの」岩波文庫、参照。)

●ヌミノスを体験したことがない場合には、まるで夢のなかで話をしているようなことになり、何について話しているのかわけがわからなくなってしまうだろう。


元型を理解するための第一歩はヌミノス体験ということで、疑似体験できそうな映画をいくつか用意しました。解説と合わせてご鑑賞ください。



1.『サイン』2002年


・初回はM・ナイト・シャマラン監督の話題作です。

・この映画は元型をテーマにしています。オープニング・クレジットの背景がそのイメージで、型はグレートマザーです。

・本編が始まると主人公の元牧師グラハムが睡眠から目覚めます。その起き方からしてグレートマザー元型を見てます。つまりオープニングは彼の夢です。実際のイメージは白黒反転した像で、見ていられるのは1秒ほどでしょう。あまりにも怖くて目が覚めます。

・次に、トウモロコシ畑でミステリーサークルを見つけるのですが、娘のボーは「これも夢の続き?」と言ったのでボーもグラハムと同じ元型を見てます。

・夢で見たイメージが内的事象でミステリーサークルが外的事象。これが最初のシンクロニシティです!などと、のんきなことを言ってる場合ではありません、何故ならグレートマザーとの対決が待っているからです。

・グラハムが犬のオシッコを拭き取る場面と、キャロライン警官が話すキャンドルマンさんの一件は、元型の活性化が惹き起こす気味の悪い嫌な感じを、観客に体感してもらうための演出です。実際その様な気分の時は、危機が間近に迫っていることがあるので、状況をよく見て最善と思う行動を取るべきです。

・元型は善と悪、肯定と否定などの両極性を持ち、グレートマザーは生と死を司ります。恐らく死は免れません。しかし洞察力と勇気があれば最悪の事態を避けられるかもしれません。
・ボーの危機はモーガンが救いました。グラハムとメリルの不注意でした(特典の削除シーン参照)が、普通そこまで気が付きません。飼い犬は身代わりです。元型を見たのは2人。次に狙われるのは誰?

・繰り返し思い浮かぶ記憶に重要なメッセージが含まれています。元型が意識に上がる際、その型に関連する記憶などの内容も一緒に引き上がってきます。グラハムが子供たちに誕生時の思い出を話す場面と、メリルが幼少期に肘を脱臼した理由を話す場面がある(削除シーン参照)。

・グレートマザーに実体はありません。映画ではモーガンの喘息発作の原因のひとつであるテレビを宇宙人に見立てています。メリルがバットでぶっ叩いたのがテレビ。水に弱いです。皮膚がカメレオンなのはブラウン管です。

・ボーの「コップの水が汚染されてる」は神経症の症状で、ゆえに元型を見たのでしょう。元型の作用で原因となった記憶が戻って治癒したはずです(フロイトのアンナの症例参照)。モーガンも発作の原因だったテレビがなくなったし、母の遺言を守っていれば回復へ向かうでしょう。グラハムは牧師に復帰、メリルは野球、いや、軍に入隊かな。

・ユングは元型の概念を提唱、患者の治療に生かしました。

・ここまで完成度の高い脚本を書いちゃうシャマラン監督って何者?



画像はタイトーが1990年にリリースしたアーケードゲーム「マジェスティックトゥエルブ」の一場面。社会現象を巻き起こした「スペースインベーダー」の第4弾で、ボーナスステージがUFOから牛を守るキャトルミューティレーションでした。UFO、宇宙人、キャトル~、MJ-12とくれば、我々世代は矢追純一のUFO特番を思い出します。決まり文句は「宇宙人からの警告なのかもしれない!」。



【追記】戦慄する黒い穴の元型夢が意味するのは、身近な人や動物の衝撃的な死か、自身が生死の境を彷徨うかの様な体験の予知です。日記を付けていないので不確かですが、それが現実になるX日は数週間から1か月先という印象です。その大きなタイムラグは、元型夢が予知夢であることを、長い間気付けなかった理由でした。X日に近くなると警告が激しくなります。睡眠時には物語性のある夢で、覚醒時には外的事象による布置で知らせてきます。その方法や表現は恐ろしいほど創造的です。当然、異様なことが続くと気味が悪くなります。その時は布置をよく見て、自分が最善と思う行動を取るべきです。『サイン』のように生の道があるはずです。



「元型とは何か?」まとめ②


●元型の概念を正確に定義することは出来ない。

●どの元型に対しても任意の(あるいは、一般的な)解釈を与えることは出来ない。

●元型とは、どのような理由で、あるいは、どのような方法で、それが生きている個人に意味を持つのかを辛抱強く発見しようと試みるときにのみ、生命を持つ。

●諸元型の名前の意味などどうでもいいことで、肝心なのは元型が個人にいかに関係するかということである。

 引用:「人間と象徴(上巻)」著者C.G.ユング他、河合隼雄監訳、河出書房新社





2.『プロフェシー』2002年


・蛾男事件という実話を題材にした映画です。

・物語中盤、警察官コニーが新聞記者ジョンに夢の内容を話す中で元型的イメージが出てきます。


  あれは夜よ 大海の真ん中にいた
  泳ごうとしても寒くて ただ見回してた つかむ物を探してたの
  プレゼントが周りに浮かんでた リボン付きで つかもうとしたけど手からすり抜ける
  私は沈み始めた 石みたいに 何もできず落ちていく でも快感なの
  力を抜いて 沈むままにまかせ 周りは真っ暗よ でも分かった
  私の上は闇だけど 光が下から射してて 死ぬんだと
  その時 声がしたわ 耳元でささやくみたいに
  「目を覚ませ 37番 目覚めろ」
  で目が覚めたの


・この夢はコニーの危機に救世主が現れる予知夢で、そこには2つの元型的イメージが現れます。1つ目は《大海の真ん中で沈む》。情動は分かりませんがコニーは涙ながらに語っていることからグレートマザーかもしれません。2つ目は《下から射す光》で、情動は快感。アニムスで間違いないです。光が何なのか分からなくても、本人は情動で気付いてるはずです。しかしながら1度の夢で2つの元型的イメージが現れることが実際あるのか分かりません。

・コニーはテレビでジョンのことを以前から知っていたし、理想の男性だったことは間違いないでしょう。出会って間もないジョンを一人暮らしの自宅に招いています。

・問題は蛾男ですが、それをひとつの元型とした場合、ジョンの体験はヌミノスと言えます。元型は主を変性意識状態にして、予言などを聞かせたり、見せたいもの自在に見せることができます。実際それらは抽象的、象徴的、神話的になることが多く、ひとつの事象で具体的な意味を知ることは難しいです。その場合、コンステレーション※を見ると分かることがある。

※コンステレーションは星座のことですが、ユング心理学では布置と言って、ある人、ある状況、ある出来事に深い情緒的反応があった時に「布置する」と言います。星の配置を見た時に、天秤に見えたり乙女に見えたり、あるひとつのことを伝えている様に見えたりするわけです。



◆余談1:私は映画を分割して観ることがほとんどなんだけど、ある日の昼間、交差点で信号待ち中に目の前をクラシックなスポーツカーが通った。その車のドアには大きく「37」と描かれていた。その夜、『プロフェシー』の続きを観た時に数字の一致に気付いたが、意味は見いだせなかった。強いてあげるなら車の数字が36以下でなくて良かったぐらい。この様な符合はよくあるけど、スコトーマの原理(心理的盲点)であって共時的現象ではない。ここまでは7,8年ほど前の出来事で、今回それを書いた数日後、新聞で「37人○○○」という見出しが目に入った。もちろん共時的現象ではないが、37人目の方は気の毒でした。

◆余談2:トランプ大統領の愛読書の中にユングの本があると知った途端、トランプさんに親近感が湧くという不思議。「掘って、掘って、掘りまくれ!」は無意識のこと?



画像はタイトーが1994年にリリースしたアーケードゲーム「ダライアス外伝」の一場面。自機シルバーホークに主体性(キャプチャーボール)を奪われて、ヌミノス状態に見えなくもない中ボス。ゲーム中のBGMはユングの「元型論」からヒントを得て作られています。ゲーム開始時の曲はメインテーマで、自我が崩壊していく様子を表現しているという。当時、シューティングゲームから歌が聴こえると話題になりました。





【次回予定】
「スラムドッグ$ミリオネア」2008年
・テレビの人気クイズ番組が題材の映画で、アカデミー賞8部門受賞しました。



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